2ルックOLLに飽きた
ルービックキューブのCFOPアルゴリズムは、
- クロス
- F2L
- OLL
- PLL
で構成される。
このうち、OLLは1ルックOLLだと57種類のパターンがある。(表) これをすべて記憶するのはかなりの労力を要する。
しかし、OLLは全体からするとボトルネックになることは少なく、 1秒や2秒を削るために57種類を覚え、 しかもそのパターンマッチも脊髄反射で出来るように訓練する必要があるとすれば、 10秒を切ることを目標としない限りはコスパが悪すぎるだろうというものだ。
OLL57種類を覚えることに消極的な理由は、2ルックOLLアルゴリズムのコスパが良すぎるからでもある。 2ルックOLLは、一般のOLLを、
- 十字OLLに帰着する
- 十字OLL7種を解く
という2段階に分解する。 1のアルゴリズムは簡単なので、実質的に2のみ覚えればよくコスパが良いため、 ルービックキューブの入門者がまず覚える 簡易CFOPの一部になっている。
また、2ルックOLLは、出てくるパターンが少なくパターンマッチが早く行えるため、 1ルックを極めた場合に比べれば遅いことは間違いないが、 絶望的に遅いかというとそうでもないという、とても優れたアルゴリズムといえる。
今のおれは、OLLは2ルック、PLLは1ルック(21種類全部覚えた) でやってるのだが、ここでおれの中で問題が生じた。
今のおれがタイムを伸ばす上で必要なのはとにかくソルブを続けることであることは間違いなく、 日に日にタイムを改善しているが、 その中にも全フェイズにおいて実りがほしい。
クロスとF2Lはパズル要素の強い奥深い世界であり、応用的なアルゴリズムなどまだまだ学ぶことがある。 それに、基本アルゴリズムのみを用いた場合でも、先読みなどまだまだ向上の余地がある。
PLLもまだ覚えたてであり、脊髄反射的に回せるほどではなく、認識と実行で10秒はかかることすらある。 うまく行っても5秒はかかってるだろう。 当然、DNFすることも少なくない。 これをより早く正確にしていくため、実りがある。 もちろん、2面判断を導入していくことにも向上の余地がある。
一方でOLLには実りがない。 2ルックOLLはもう極めてしまっているし、回すのを早くすることは出来るだろうが、 全体のタイム短縮にはつながらないし、なにより頭を使わないため面白くない。 おれは実りのないことはしない主義だ。
VHLS
しかし、1ルックOLLは絶対に学びたくない。 なにせおれは「ルービックキューブのタイマー計測はF2Lまでで良いのではないか? だってどうせその後は暗記なんだし」という考えすら持っている人間なので、 ただ暗記してそれを実行するだけのロボットジョブには興味が持てないのだ。 ロボットジョブならばロボットにやらせればよいだろう。 中学受験で例えるならば、1ルックOLLは開成的なのである。 おれは開成を好まない。
そこで入念に調べるとVHLSというアルゴリズムが見つかった。
VHLSというのはなんとかなんとかLast Slotの略である。
このアルゴリズムでは、F2Lのラストスロットの挿入時に工夫することで 2ルックOLLの1ステップ目をスキップする。 つまり、必ず十字OLLが出てくるようにする。
それでは、2ルックOLLの1ステップ目を回すのと何が違うのかというと、
- 手数が多少短い
- 2ルックOLLでは、1ステップ目を何度か繰り返すことになる場合があり、安定性が低いといえるが、VHLSではそういう不安定さがない
- OLLが始まったときに十字しか出てこないことが保証されるため、パターンマッチが早くなる
- OLLがスキップする確率が高まる
という長所がある。
おれとしては、みんながみんな1ルックOLLを学ぶという全体主義的なところ自体も好まないし、 このVHLSというユニークな解法にチャレンジするしてみようかと思わせる魅力を感じるわけである。
にゃにゃんのVHLS
VHLSを紹介するサイト・動画は山ほどあるが、 もっとも優れているのは日本人のにゃにゃんさんの記事である。 独自に編み出したアルゴリズムもあるそうなのでこれをにゃにゃんのVHLSと呼ぶ。
海外のサイトには別のアルゴリズムが書いてあったりもするが、 体系だってなく、規則性が見られない印象があった。
一方でにゃにゃんのVHLSは、記憶することが出来るだけ少なくなるように 規則性を持っており、究極的には覚えることは7つほどとなる。
整理する
にゃにゃんのVHLSにはアルゴリズム表があるが、 これは決してベストであるとはいえない。 特に、状態の遷移が分かりづらい点に欠点があると感じた。 これは、遷移が図で表されていないこと、読者が脳内でAUFをしなければならないことが 理由と考えた。
そこでおれがよりわかりやすい形に整理した。 情報を自分でわかりやすい形に整理することは学習の基本だ。 そしてその重要性は年齢を重ね、単純記憶能力が衰えてくればくるほど重要になってくる。
この図の見方は15番の時を例にすると、
- RU’R’U’すると6番に帰着する
- 緑の部分がF2Lと思ってスロットインすると5番に帰着する
- 5番は終端でありスレッジハンマーで解ける
となる。
こう見ると、非常に少ないルールによって成り立っていることがわかり、 記憶することがとても少ないことがわかるはずだ。
VHLSは、タイムを狙う上では1ルックOLLに劣ることは間違いないが、 美しさがあり、学び甲斐のあるアルゴリズムだ。
ルービックキューブのガチ勢は通常、1ルックOLLを覚えてしまい、 そうでない人は2ルックOLLにとどまり続けるため、VHLSの使用者は現在のところ希少である。 2ルックOLLから1ルックOLLに進む心理的ハードルは非常に高い。 しかしVHLSならばどうだろうか?この記事をきっかけにしてVHLSの使用者が増えること、 そして新しいアルゴリズムの発見につながることを願っている。