夏季オリンピックの花形は陸上だ。 これに対しては誰も文句がないだろう。
北京オリンピックの感動の銅メダルから始まり、 日本の400mリレーは伝家の宝刀アンダーハンドパスを武器にしたお家芸と言われるまでとなり、 東京五輪がこのパンデミックのさなか強行開催された理由の半分は、 悲願の400mリレー金メダルというスーパー明るいニュースによって パンデミックで閉塞した社会に希望をもたらすためでもあった。
他の競技はどうだろう。 選考会なんか開かれてるかどうかはすら知らないほど全く盛り上がってないし、テレビでもニュースでも取り上げない。 誰が代表として出てくるかなんか、 オリンピックが始まってからようやく知るくらいだし、 金メダルをとっても「日本人が勝った。すごい」くらいの粒度でしかわからない。 レスリング川井の妹がいるなんて、日本人の何パーセントが知ってた? おれは知らなかった。
しかし一方で陸上の特に100mは、 日本選手権では国中が盛り上がるお祭り状態だし、 それ以前のレースからニュースになるくらいだ。 日本選手権の100mは国事と言っても過言ではないほど格がある。
おれ個人としては、山縣の9.95はすごいと思ったし、感動はした。 しかしそれは年齢的なことや怪我に打ち克ったという点がすごいということであって、 純粋なパフォーマンスだけでいえば、以前の方が上だったと思う。 以前の山縣なら9.8台もあり得ただろう。
あの時は、追い風が2.0mちょうどだったが、そう仕組まれたレースだったのだ。 スタートラインの後ろに風速を調整する装置があり、 追い風参考記録にならないように絶妙にコントロールする。 チートみたいな環境で出した記録だった。
こうやって、日本の短距離陣のレベルは上がっているという事実が捏造され、 今度こそ個人で決勝、リレーでは金メダルだという熱が上がっていった。 これはすべて、リレーで金メダルをとるという快挙のための布石だった。
こうして迎えた日本選手権。 この試合で勝った選手が史上最強の王者と言わんばかりに囃し立てられた上で行われたレースで勝ったのは なぜか多田修平だった。 しかし、サニブラウンは明らかな調整ミス、 山縣はレース途中で靴紐が解けるアクシデントにより失速、 小池は顔も身体も以前とは別人、桐生は怪我と、 他の有力候補が全員ダメな状態でようやく勝てた奇跡のレースだった。 記録も10.15と、普段の日本選手権なら3着にも入れないような低記録だった。 この時の2位はデーデーブルーノ。デーデーは非常に才能のある選手だと思うし、 実際おれはかなり前の記事でも取り上げているが、 今現状を考えると、このメンツで2位に入るのは誰がどう見てもおかしいのだ。
しかし勝ってしまったものはしょうがない。 9.95の日本新記録を持つ山縣を抑えて日本王者となった多田修平は実際には9.8台の実力があるはずだ。 世界トップクラスのロケットスタートを武器に、中盤終盤も失速しなくなった多田はきっと決勝に進んでくれるだろう。 そのくらいの勢いがメディアによって作られていった。 そんなわけがないのに。
結局、 100mは予選で3人とも敗退。 400mの予選は悪い記録だが着順で拾われてぎりぎりで決勝に進み、 結局決勝はご存知のとおり、1走と2走の間でバトンが通らずに失格となった。
リレーは、明らかに多田の失速が原因だ。
そもそも論として、通常2走と4走には通常、後半型の選手を入れる。 なぜかというと、2走と4走は距離を長く走れるからだ。 だから2走に山縣が入ってくるのがまずおかしい。 伝統的には、飯塚、末續、伊東など、後半にも強い200m選手が担当する区間だ。
これは本来ならば、サニブラウンか白石を使うのが良いのだが、 サニブラウンが不調、白石は怪我をしているので、 良い駒がなく、まさか1走の多田を蹴るわけにもいかないだろうから仕方なく山縣を2走に使ったという背景があるように思う。 それでもバトンは通るように練習はしたと思うが、 多田が後半で予想以上に減速した結果、加速の良い山縣に追いつけなかった。 2走山縣の加速はやばいという話を桐生が以前に自分のYoutubeで言ってた。
今回はそのやばい加速が裏目に出てしまったことになるが、 当然、加速が良いことは責められるべきではない。 責められるのは追いつけなかった方だ。
もし、多田が期待どおりに走って後半もそれなりに維持出来ていたら、 山縣に追いついていて、今回の勝ちタイム37.5だったから金メダル争いに絡んでいても おかしくなかった。 日本記録は37.3台であり、37.5というのはワンチャン勝ててもおかしくない水準だ。
自分の失態に気づいているからか、多田はレース後終始うつむいていて、 泣き出しそうな顔をしていた。
これだけの大舞台で失敗したのだから落ち込むことは仕方がない。 しかしその後の態度が問題だった。 インタビュアの質問にはまともに回答せずはぐらかした上で、 最後まで「自分のミスです」の一言を言えなかった。
こういう男なのだ。 おれは昔から多田については、メンタリティが悪いことと、 彼の特殊なフォームが 日本陸上界にとって害悪であると主張しているが、 今回もその汚い本性を通常運転でさらけ出した。
多田修平をリレーメンバーから外してほしい論個人戦に遡ると、不幸にも彼が100m予選の先頭バッターとなり、 勝手に萎縮して勝手に自滅したことによって 他の選手にとっても流れが悪くなり、 大舞台に強い山縣すらも予選落ちという謎の結果に終わってしまった。
金メダルを期待された400mリレー決勝、 ここでも先頭バッターの多田は自己のコントロールを失い、 前半からエネルギーを使い果たし、後半に急減速したために山縣にバトンを繋げなかった。 チームメンバーも解説の高平も揃って、「攻めた結果です」とかばっていたが、 誰がどう見ても多田が急失速したことが原因なのに、 それを攻めたと表現するのはおかしいだろう。 はっきり多田が失速したためにバトンが渡らなかったですと言う方が良かった。 あれでは何かを隠蔽しているかのように見えてしまう。
おれは、今回の東京五輪の失敗は、 日本の短距離界が外を見ず、内輪だけで誰が強いだ誰が速いだと わーきゃーして海外を見なかったことの結果というのは当然あると思うが、 それ以前の問題として この多田を有力選手として扱ったことが悪かったと思う。
これは第一に心理的な問題だが、 多田という大して実力のない選手をもっとも実力のある選手だと取り上げてしまうことによって、 他の選手のパフォーマンスを下げてしまうからだ。 まさに、日本選手権で多田が勝ってしまったことは、日本陸上界にとって不幸としかいいようがなかった。 奇跡が起こり、100m予選でスカっと10.0台を出して先陣を切ってくれたらまた流れは変わっていたと思うが、 そういう器ではない。 プレッシャーがない時にしか実力を出せない人間など、 自分より立場の弱い人間には強くあたり、立場の強い人間には子犬のように弱くなる人間と変わらない。 もし、山縣が日本選手権で靴紐が解けず、差し切っていたら、全く世界は変わっていただろうと思うと あの靴紐が憎い。
また、こういうメンタリティの人間がチームにいると、 今回のようにすべての流れが悪くなり、全崩れということが起こるのだ。 こうなることがわかっていたから、おれは以前から、 多田のような人間にはチャンスを与えるべきではなく、 少なくともリレーからは外すべきだという論を主張しているわけである。 上でリンクした記事は2019年のものだが、これは当然東京五輪を睨んでのものだった。 おれにはこうなることがわかっていたのだ。
今回のリレー、おれが今走れる選手でオーダーを組むならば、 1走山縣、2走デーデー、3走桐生、4走小池だった。 調子が上向いていて、後半に強いデーデーを2走に入れる方が明らかに良かった。 それに、将来的なことを考えても大舞台を経験させておく価値があった。
リレーの失敗についてまとめるとこういうことだ。 多田という1走しか出来ない人間が運良く日本選手権で勝ってしまったために、 リレーから外すことが難しくなり、 そうなると山縣を2走に使うしかなくなるから、必然的に3走は桐生、4走は小池ということになってしまった。 その多田が想定以上に失速したために山縣にバトンを繋げられなかった。
誰が戦犯かは、みなさんに結論を委ねたいと思う。