著者の竜盛博さんは、2000年のネットバブル時に、友人の薦めで受けたアメリカの会社からたまたま内定が受けた。これを彼は、バブルだったからだと冷静に分析している。
しかしその時、日本企業からの駐在員だった彼は、「自分は駐在員だからアメリカに来ているだけだ」と思い、アメリカで正社員として働くということが想像出来ず、オファーを断る。この時の後悔が、いつまでも残る。
この時、「やった後の後悔よりも、やらなかった後の後悔のほうが大きい」(原文ママ。ところで、“後の後悔"は"腹痛が痛い"と同じく重複ではないか?)ということを痛感したが、同時に、「アメリカで働くこと」の現実性に触れることとなる。後に竜さんは渡米し、アメリカで10年目を迎える。
この本は、「アメリカ最高!日本のITは糞!優秀なエンジニアはアメリカに来いよ!自由最高!」という本ではなく、「もしあの時自分た正しい判断を出来ていたら」という思いから、今日本からアメリカに行きたいと考えているエンジニアたちに向けたアドバイスがまとまっている。竜さんはアドバイスをするために十分な経験がある。彼はレイオフも経験したし、日本人がアメリカで働くことはどういうことかという視点も持っている。
本でも述べられているように、ネットで見る記事は多くが「アメリカは最高!」に意見が偏っていると感じたことがきっかけでこの本を書き始めたようだ。実際に、アメリカで働くことのデメリットについてもフェアな書き方でまとまっており、楽しく読めた。また、外国人がアメリカで働くに当たってのアドバイスなども含まれており、大変参考になった。エンジニアが書いたものとはっきり分かるわかりやすい文章であり、Kindleでポチってからものの2-3時間で読破してしまった。オススメです。
ちなみにこの竜さん、私が日立にいた頃お見かけしたことがある。日立には社内研修があり、その1つに「世界のソフトウェア開発潮流」というものがある。アメリカで働く日本人エンジニアを招待し、日立のエンジニアたちと対話形式で、アメリカではどういう開発を行っているのか?ということを議論するものである。私も、上司から1つだけ研修に行っていいと言われたのでこれを選んで参加したわけだが、3年と満たない日立人生の中でも思い出に残るものとなっている。この研修が今も残っているか不明ですが、もし残っていたら残留日立人は参加することをオススメします。そしてこの本を買っていってサインをもらいましょう!