この本は前作「若者はなぜ3年で(ry」の続編である。前作は主に、年功序列そのものに対する問題について書かれていたが、本作は、その現状に対して、若者はどうしたのか、社会はどう変わるべきなのかについて書かれている。とは言っても、それぞれ明確に分離出来る話ではないので、基本的には同じような本だと思っていい。レールを飛び降りた(あるいは初めから乗りすらしなかった)アウトサイダーの話を2-30紹介している。年功序列をルーツとする昭和的価値観という静的なものに対して、彼らがどういう考え方を持ったのかが共通項である。しかしどれもそれほど目新しい感じがしない話で、面白くない。
本の最後に書いてある主張について。城氏は、日本企業は「やっている仕事に基づいた給料体系をとるべきだ」を主張としている。それによって、非正規雇用者や女性は救われ、多様性が採り入れられるとのことである。そして、日本企業はすこしずつ、それに近づくだろうと言っている。根拠としては例えば少子化が挙げられている。しかし現実問題、それが実現されるのはいつだ?10年後か?20年後か?いや、一生無理じゃないかと思う。日本人は、地震があっても誰かが逃げ出さない限りは逃げ出さない(きっと)遺伝子レベルの習性がある。このままでは明らかに会社がダメだと分かっていても、変化しないまま滅びることを選んでしまうような気がする。この二年、日本企業に勤めてみて、色々と感じたことも、これを裏付けている。実際、パナソニックやシャープやNECは虫の息だ。年功序列に限らず、このままじゃやばいなと分かっていても変化を拒むのが日本企業である。何か物を言えば、反発を食らう、場合によっては自分の立場が危うくなるし、成功してもいきなり大幅出世出来るわけではない。ハイリスク・ローリターンすぎて、誰も率先して改革しようとは思わないだろう。年功序列自体が年功序列の改革を阻んでしまうから、年功序列は盤石ということになる。逃げ切り世代、おめでとう。どうせ無理だと考えて希望を失った時、人間はとても弱くなる。おれはもう、開発用のハイスペックパソコンやキーボードの購入をねだることすら諦めかけている。
この本が、昭和的価値観について何か新しい考えを示すということを目的とするならば、それは余裕で失敗している。しかし、日本社会に属する人間がこの本を読み、日本の未来を変える力を加えるということであれば成功すると思う。特に若者は読むといい。これから就職活動をする人、あるいはもっと早く、中高生も読むと良い。すでに日本企業に入った人でも、「なぜ自分の仕事はこんなにつまらないのか」の理由を知る意味で、読むと良い。問題があるのに目を瞑っているのが一番良くないし、からくりを理解した上で客観的に見ることが出来れば、苦しみも減ると思う。自分としては、入社二年目でこういう問題について関心を持つことが出来るようになって幸運だと思う。日本企業は変わらないかも知れないが、日本自体が変わればそれでいい。糞みたいなコードを直すより、作り直した方が早いことも多いでしょう。
最後に、p.104より一部引用して、何の感想も述べずに終了する。
「今更な話だが、僕は東大を卒業している。そこでそんなに熱心に勉強した記憶もないし、仕事柄、学歴というものがすでにほとんど意味を持たないことも知っているから、普段、特にOBだということは意識しない」