古くはチョベリバやMMから始まり、日本人は言葉を短縮することが大好きである。なぜだろう。そもそも日本語は冗長なんじゃないか。グロ転も、元は「グローバル転職ガイド」だったが、著者によってグロ転と短縮されてしまった。これでは、グローバルのグロであるとは誰も分からないであろう。グロい何かだろうか?これがグローバル人材のセンスなのだとしたらおれはグローバル人材になれそうもない。
この本は出版されてすぐに買ったのだが、他の本に目移りしている間にだいぶ長い間放置してしまい、この前の週末に駆け抜ける決心をして一気に駆け抜けた。とりあえず読了ということで、感想文を書こうと思う。
〜のススメという押し付けがましいタイトルの本やブログ(例)は多い。しかしこの本は違う。あくまでも「ガイド」である。著者の意図はここにある。著者はグロ転を推奨しているわけではない。あくまでも、人生における選択肢の一つとして紹介しているだけであり、グロ転を考えた時にどういう展開があり得るのかという紹介をしている。従って内容は淡々としており、それ故に私は読む気をなくした。一言でいうと、眠い本である。
始めに断っておくと、もしあなたが技術者であれば、この本から得るものは多くない。結局、あなたが技術者である場合、世界が舞台のグローバルジョブ(ディベロパなど)を得ようと思えば以下のことをするしかない。
- 英語を極めろ。
- 価値のある技術を極めろ。
- 履歴書やコードを公開するなどしてアピールしろ。
当たり前のことである。この本のほとんどは、マネージャのキャリアを前提としている。技術者は、本質的にグローバルジョブなので、英語と技術を極めてどんどん世界で闘いなさいとのことだ。おれはそういう未来が良い。日本の小さな組織で居心地良く威張っているだけの飼いならされたハッカーなどには夢がない。
著者はまず、仕事をグローバル・グローカル・ローカルの3つに分類する。その上で、国を欧米先進国・欧米中進国・アジア先進国・アジア中進国・アジア発展途上国に分類し(本中、表5-7)、それぞれの組み合わせにおける仕事の得やすさやキャリアプランについて淡々と書かれている。内容としてはメイロマの本と被るところもあるが、あくまでも客観的な記述に留めてある点が違いであり、理系文章に読み慣れている私としては、ストレスなく読める。
最近、kindle版が発売されたようなので、詳しい内容はポチって読めば良いと思う。ここでは、気になったエピソードを紹介する。
- アジアに転職するならばインドネシアが良いと思った。インドネシアの物価は日本の1/3-1/4である。しかし給料は手取りでなんと19万、給料の他に税金や保険は会社が払う。車社会であるため、日本人には、運転手と車がつけられる。コスという住宅は月4万であり、ネットも光熱費もろもろ全部含まれている。結局10万以上手取りが残り、超うはうはな生活が送れる。しかしうはうはしすぎると命を落としかねないのがネックだ。インドネシアはHIVが社会問題化している。気をつけよう。
インドネシアすげーすげーと思って、ハッと我に返ってHIVについて調べてみたら案の定であったという悲しいお話である。しかしそれにしても良い国だなぁという印象がある。アジアのHIV事情はかなり深刻であるから、常に注意しなければならない。
最後に、この本を読んでぼんやりと感じた結論的な何か、
- もし、あなたが日本でレールからはみ出てしまった人間であるならば、アジアに即出た方が良い。日本にいてもチャンスはこない。むしろチャレンジャーとして人生を楽しもう。一年間で英語を話せるようになれ。それしか生き残る意味はない。死に物狂いでやれ。アジアで勝負しろ。
- もし、あなたが日本のグローバル企業で文系職についているならば(レールに乗っているならば。例えば日本大企業の営業職や法務職などであろうか)、グロ転はあくまでも選択肢だ。会社の中でグローバル人材になるパスも狙った方がいい。海外絡みの案件には積極的にチャレンジにして、グローバル人材として認めてもらうことだ。きっかけを掴むために必要な英語力は、日本企業においてはとても低い。TOEIC800点がどうとか言って騒いでるレベルの低さに呆れる。楽勝だ。ただし、日本での取引経験などを活かして海外にチャレンジすることも選択肢だ。アジアでは特に、日本人であることに価値がある。日本のビジネスマナーを知っていることが有利になる。その価値はどんどん下がっていくが、今ならまだうまい。アジアに渡り、たくさんの経験を積むことで未来を開くのは男なら誰しも胸が熱くなる生き方だ。
- グロ転グロ転と言っても、明るいことばかりではなく、リスクうんぬんを述べずとも、日本の方がまだマシという点もあるので、結局、個人の境遇の上で冷静に思考して決断するものである。おれも、日本で、あるいはこの会社で学ぶことがまだあるかも知れないという考えを一部では持った。
以上。本腰入れたら5時間以内で読了出来るような薄い本なので、この感想文に納得行かない人は是非読んでみることをオススメします。