推理小説というと、メジャーなところではシャーロック・ホームズ。これは、最近なんとかカンバーバッチさんがホームズ役でドラマ化されたから、見た人も多いと思う。というか私も見た。そのためだけに一時期ネットフリックスを契約していた。
しかしもう一人忘れてはならんのがエルキュール・ポワロで、こちらはシャーロック・ホームズとは違って警察を定年退職したちんちくりんでまるっこいベルギーおじさんという容姿をしている。容姿はまさにコナンに出てくる目暮警部を想像してもらえばよいと思う。
推理の天才であり、「灰色の脳細胞」という言葉が彼の優れた頭脳を形容するために使われる。性格も愛すべき方向にイカれていて、突然発狂したり、突然失踪したりする。
小学生か中学生の頃、ポワロシリーズの名作のABC殺人事件とオリエンタル急行殺人事件を買って読んでいたことがある。しかし途中で飽きてしまい、最後まで読むことはなかったし、内容も覚えていない。それがこの歳になり、またポワロに挑戦してみたいという気持ちが起こり、まずはポワロシリーズの始まりであるスタイルズ荘の怪事件を買ってみた。
300ページ強の推理小説であるが、読みやすいこともあり、一週間ほどで読めた。特に最後の150ページほどは2日で一気に読んでしまった。それほど面白い。序盤は、色々な証拠が出てくるから、その都度本を閉じて、「こいつが犯人なんじゃないのー?」と妄想するのが楽しく、後半はポワロの閃きが続くから、本を閉じることが出来なくなる。
もちろん、途中で犯人がわかることはありえない作りになっている。しかし、それを妄想するのが楽しいようには作られている。推理小説の作り方にはセオリーでもあるのだろうか。とにかく見事だとしかいいようがなく、感動した。
物語は一貫してその相棒のヘイスティングの視点で描かれる。ヘイスティングというのはホームズシリーズでいうところのワトソンに当たる。
あらすじだけまとめる。
ヘイスティングは友人のジョン・キャベンディッシュに誘われてイギリスの豪邸スタイルズ荘に余暇に来ていた。スタイルズ荘は現在、その母親であるエミリー・イングルソープという女主人の持ち物であるが、このミセス・イングルソープはアルフレッド・イングルソープという品のない男に唆されて再婚してしまう。スタイルズ荘には他に、ジョンの嫁メアリ、弟ローレンス、その他エミリーの友人や友人の娘、その他大勢の召使いなど、たくさんの人が住んでいる。ジョンもローレンスも金欠であり、遺産相続の観点から、アルフレッドの出現は好ましく思っていない。それどころか他の住人だれしもが、遺産うんぬんを抜きにしても、親愛なるエミリー・イングルソープをたぶらかしたアルフレッドのことを良く思っていないことが描写される。
という感じではじめの二章48ページ分だけ余暇を過ごしたのち、三章目でご想像のとおり、エミリーが殺害される。エミリーの悲鳴を聞き、ヘイスティングたちが駆けつけた時、エミリーの部屋は扉が閉まっており、ヘイスティングたちは強引にドアをこじ開ける。そこでエミリーは痙攣を起こし、死ぬ。ストリキニーネという毒物による中毒死であった。
この時、アルフレッドだけが駆けつけなかったこと、エミリーが死ねばアルフレッドに遺産が入るため殺す動機があること、アルフレッドにとって不利な証拠がたくさん出てくるところから、アルフレッドが犯人であるかのように話が展開される。しかしポワロは「何もかもが揃いすぎている」ということから犯人アルフレッド説に疑いを持つようになる。
果たして、真犯人は誰なのか。それは自分で読んで確かめてください。