【二月の勝者】なぜ二月の勝者は面白いのか。子供は泣いて強くなる

元二月の勝者の勝者(麻布合格)であるおれがなぜ二月の勝者という漫画が面白いのかを語ろうと思うわけです。

この漫画が面白い理由としては、簡単に思いつきそうなものとしては、

  1. 起承転結がはっきりしていて、それぞれの章にテーマがある。「ブラックジャックによろしく」のような形態。
  2. 中学受験という特殊な分野に関するあるあるを取り扱ったものなため、当事者にとっては当然面白いし、外野にとっても興味本位で面白い。似たようなものとしては、囲碁の院生という特殊な分野を熱かった「ヒカルの碁」がある。これは実際に多くの子供に影響を与えて、強いプロ棋士を輩出した。この漫画に影響されて中学受験塾に就職する人も増えるのだろうか?
  3. 子供たちの成長を追っていくのが楽しい。これは、アイドルや競走馬をデビューから追い続けるのと同じようなこと。おれの推しはまるみです。

というのが挙げられますが、当たり前すぎるので、おれは「子供の涙」に注目してみようと思います。

この漫画は、 【二月の勝者】松村くん。全落ちの絶望 で書いたように、 昨年の受験から始まるわけですが、 ここで印象的なのは、松村くんという麻布志望の子供が試験で失敗し、あり得ない量の涙を流しているシーンです。

「いや、そんなに涙出る!?」

と笑いたくなるほどの涙なわけです。

しかし、この涙は、中学受験を経験した人間ならば理解出来るものであり、 松村くんが「いかに努力してきて、本命の試験で失敗していかに悔しいか」を正しく表現していると感じます。

おれが中学受験をしたのは1997年ですが、 ちょうど4年生か5年生の頃にこんな歌が大ヒットしました。

「涙の数だけ強くなれるよ」というフレーズが印象的な歌ですが、 まさにこの歌に励まされた中学受験生は多かったのではないかと思います。 おれもそうでした。

他の登場人物も、涙に様々な理由はあるものの、 この漫画には小学生が泣くシーンがたくさん出てきます。 試験の成績が悪くて泣くという子もいますし、そうでなくとも自分の才能に悲観して突然泣き出す子など様々ですが、 たぶん、**「一度も泣かずして難関校を突破した子というのは存在しないのではないか」**と思えるほど 中学受験というものは泣くものなのです。 そして、何度も泣いて何度も立ち上がった子だけが難関校に合格出来るのだと思います。

というか実際におれがそうだったのです。 おれの中学受験は比較的順調で、客観的に見ると余裕だったわけですが、 何度も泣きました。 勉強が辛くて泣いたことはありますし、 成績がいまいちで不安で泣いたこともありますし、 塾の代金や私立の授業料を知った時に自分が家計の負担になってることを感じて泣いたこともあります。 しかしその度に、絶対に合格するしかないという思いを強くしたことを覚えています。 この漫画に出てくる島津くんのように父親による虐待というレベルの家庭事情を背負っている子はさすがに稀だとは思いますが、 どの子も「絶対に落ちられない」という思いで本命の試験に向かっていることには間違いありません。

松村くんは、結局麻布には落ちてしまったわけですが、 ここで描かれている大量の涙からは、 彼がそれまでに流してきた涙の量と、その度に立ち上がってきたことが、経験者ならば想像出来ます。

この記事を書いた段階では最新巻が7巻で、 進行としては10月なのですが、これから受験が近くなるにつれてより テンションは高まっていき、泣き出す子や発狂しだす子あるいは母親が描かれていくはずです。 しかし、これらは決して誇張ではなく「リアル」なのです。

これが、この漫画が面白い理由です。

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