おれは高校までは陸上をやって、 大学ではパワーリフティングをしていた 個人種目至上主義者であり、特に最近話題の サッカーとかはフィジカルが大したことない 知的障害スポーツだと考えている口なのだが、 それはともかく、 受験は陸上競技の中でどの種目に一番近いだろうかと思いをふと思いを馳せた時、 きっと走り幅跳びだろうという結論に至った。
よく東大受験はもう一回やれば合格者の半分は入れ替わると言われるが、 なぜそんなことが起こるのだろうか。 これは、受験生の実力分布のようなものを考えてみればわかる。
東大受験のように、相当に難関な受験では、 多くの人間には素質の問題により、いくら勉強しても届きようがないし、 ある程度素質がある人間にとってもマックスの努力をしたとしてもぎりぎり届くか届かないかという勝負になってしまう。 東大受験生のほとんどは年に一度しかない最難関国家試験のためにマックスの努力で臨んでくるため、 結局のところ、受験生のほとんどが合格点ぎりぎりのラインに密集することになる。 だから、たまたま調子良かった悪かったという運の要素によって結果ががらりと変わってしまう。 そのため、東大全体で仮に試験を2回行うとすれば、それに近い割合で合格者が入れ替わるというのはそうおかしな話ではない。
おれの母校の中であれば、京都大学は東大よりはかなり簡単なのと、 受験者は東大ほどピーキングしてこないのでここまで顕著ではないかもしれないが、 麻布中学は 受験生のほとんどが競走馬レベルで調教されているにも関わらず 6割が合格安全ラインで、最高得点も7割程度という難しめの問題が出題されるため、 出題された理科や社会のネタにたまたま馴染みがあったとか、たまたま算数で閃いたという偶然が関与する割合が大きめだろうと思われる。 なので、2回試験を行うことが出来るならば、同様に合格者が相当数入れ替わることになるだろう。 中学受験は運だ。
受験と幅跳びが似ているのは、 幅跳びの踏切にかなりの運要素があるからだ。 100メートル走では、10秒で走る能力がある時11秒かかったということは起こりようがないが、 幅跳びではこの運要素のため、ベスト記録が8メートルの選手が踏切で失敗して 7メートルちょいみたいなことがよく起きる。 オリンピックや世界選手権でも、 自己記録が高い選手が勝つかというと必ずしもそうではなく、 大番狂わせがよく起きる。 カール・ルイスが偉大なのは、100メートルが速かったからではなく、幅跳びで連勝したからである。 彼のように、常に8メートル後半の記録を出し、世界レベルの大会で勝ち続けることは、 短距離走より難しい。 おれは、カール・ルイスはウサインボルトより偉大だと思う。
一回の踏切失敗によって人生が崩壊した男がいる。 名をルシファーという。 ルシファーは、筑駒を高1で退学後、大検を経て、 2003年に東大理科3類を受験したが、2.3点の僅差で落ちてしまった。
2003年に彼にとどめを刺したのがかの有名な「円周率が3.05以上であることを証明せよ」だ。 この伝説の問題は、 当時ゆとり教育が円周率を3として扱うという謎の暴挙に出たため それに対する批判として東大が出題したとして話題になったものだが、 後には中学受験にも影響を与えて、2021年の浅野中学の問題では「円周率が3より大きいことを説明せよ」 という問題が出ていたりする。
この伝説の問題であるが、 通常の人間は円に内接する正n角形の周長からアプローチするため、 実のところこの問題は話題ほど難しくはない。 しかし何を思ったかルシファーはこの凡人解法ではなく、 どうやらよりエレガントな解法(何かしら級数和の結論を使って証明したようなことを言ってた気がする) を選択し、どうやらそれが誤答と判断され、 その年は不合格になってしまったということのようである。
もし、ルシファーがこの時、ふつうの解法を選んでいたらどうだったか。 ルシファーはこの問題で当然正答し、現役で東大理3に合格していたはずである。 ルシファーは失意から闇の6年間を含む9浪目でようやく理3合格を果たすわけであるが、 この9年の間に 医学部の難易度はインフレし続け、 これにより医学部生の学業偏差値が高くなったことと 国試対策が充実してきたこともあり、 国家試験自体も大幅に難しくなってしまった。
もし、ルシファーがあの時、凡人解法を選び、 ふつうに正答し、実力通りに東大理3に合格していたら、 卒業時には今よりずっと簡単な国試を受けられたはずであり、 その場合は今よりは合格している可能性が高かったはずである。 現役東大理3医師ルシファーが誕生していてもおかしくはなかったのだ。 彼のいう優秀な精子を残せていた可能性もあった。
さて、117回の医師国家試験はどうなるだろうか。 次こそ奇跡のジャンプを決め、東大医学部卒の医師ルシファーが誕生するか。 あるいは、無事6浪に突入するか。
おれの調査によると、74%の人が不合格を予想しているそうだが、どうかな。