私の文章は「読みやすい」とよく言われます。
私は通常、3000字程度の記事であっても、30分程度で書き切ります。長くても1時間です。最初から最後まで一旦書き切るのは20分程度で、それからは2回か3回ほど読み直して推敲をします。
この記事の目的は、読者のみなさんに素早く、読みやすい文章を書く技術を伝えることです。いきなりハードルを上げてしまいましたが、最後までお付き合いください。
読みやすい文章は決まりきった形をしている
書く内容の良し悪しはともかく、何かを書く時に、それが読みやすいというのは以下のような性質を有しているということです。
- 読者に読む動機を明示している
- 拾い読みするだけで内容がわかる
読む動機を与える
読む動機というのは例えば、おいしいカレーの作り方を教えます!という記事を書く時にいきなり、「はじめにルーを用意します」から書き始められていたら、これはレシピのメモ書きかなんだろうかという気持ちになります。私ならば、「最近、朝カレーダイエットという方法を聞きました。毎日朝に食べるというダイエット方法ですが、毎日食べるものはおいしくあるべきです」などと導入を書いて、読者の興味を引きます。この記事でも、「自分の文章は読みやすいと言われる」「その方法を教える」という導入を書いています。ここに惹かれたから、みなさんにここまで読んでいただけたというわけです。
拾い読みできる構造
読む動機を与えるパートというのは、論文や技術文書では必須とされていて、「イントロダクション」と言われます。なぜ、その文章を読まなければいけないのか、きちんと書くことは大事なこととされています。ブログなどの文章でも、読者は無意識のうちにこういったものを期待しているため、ない場合はかなりストレスになります。特に、何か情報を検索してたどり着いた場合において、イントロがない文章を最後まで読む人はいないでしょう。
通常そこでは、文章が全体として何を言おうとするものなのかが明らかにされます。文章のその他の部分は、その主張に対して肉付けするために存在します。
その論理構造を階層的に構築することが、文章を設計するということです。
文章のトップレベル、セクション、パラグラフなどは上位の主張の根拠となったり、列挙となったりするために存在します。例として、サニブラウンのリレー順を一走にすべきという記事を設計してみます。
- サニブラウンを一走で使うべきだ: 日本の短距離シーンが盛り上がっている。中でもリレーは東京五輪でも金メダルを狙える位置にあり、その走順が注目されている。一般的に、最速のランナーがアンカーを務める印象から、サニブラウンがアンカーを務めると考えられているが、ここではサニブラウンを1走に使う理由について話す
- 一走の重要性
- 一走でリードすると他チームにプレッシャーを与えてバトンミスを誘発出来る
- 一走の段階でトップに並んでおくと、それ以降のメンバーの闘志に火がついてタイムが引き上げられる
- サニブラウンを一走で使うべき理由
- バトンを渡すだけでよい。サニブラウンは海外に住んでいるためバトン練習に参加することが難しい
- 後半型なので後半に失速してバトンミスする可能性が低い。4走よりも1走の方が向く。4走で使うと3走の人が追いつかなくなる可能性がある
- 一走の重要性
このように、1つ1つのまとまりに単一の主張をもたせて、それを階層的に関連づけるのが、文章を書く際もっともはじめにやることです。これは書き始める段階にやることであって、あとになってやろうとすると大抵は破綻します。私の大学時代の卒論や修論を書く段階では、まず目次を骨子として提出するように言われました。そこでチェックを受けてから、肉付けをしていくという作業になります。
上に例として挙げたサニブラウン一走起用論は、この骨子を読むだけで内容を掴むことが出来ます。この構造は文章の中でセクションやパラグラフとして構造として明らかになるから、読者はその先頭だけを拾い読みすれば大まかな内容を掴むことが出来ます。そしてもし、その内容に納得出来るのであればそれ以上は読み進めないだろうし、どういうことなのだろうか詳しく知りたいと思えば、より深い階層まで読み進めていきます。上の例であれば、1走が重要という主張に対して特に異議がないならば読み飛ばすかも知れません。
このように、読者が適宜読み飛ばせるように設計する方が、読みやすい文章にはなります。読み飛ばせない文章は読むのにかなりストレスがかかります。
情報の8割を捨てる
文章は所詮、人間が書くようなものだから、コンピュータプログラムのように理路整然とは行かない場合があるし、チェックもしづらい。特に、書きたいと思った内容をすべて盛り込もうとすると、ぐちゃぐちゃな文章になることが多い。
色々言おうとしすぎて結局何が言いたいのかわからない人に会ったことはないだろうか。文章も、言いたいことを10割全部盛り込もうとすると、書き手の技量にも拠ると思うが、構造がすっきりしなくなり、見通しが悪くなりやすい。そこで、書きたい内容の8割を捨ててしまい、2割だけを書くということをオススメする。例えば上の例であれば、サニブラウンは海外に住んでおり、海外選手とスタートラインに立たされてもプレッシャーを受けにくいなど他の理由も考えられるが、別にこれを書かなくともサニブラウンを一走で使うべき理由を主張出来るのであれば書かなくても良い。あるいは、むしろその理由の列挙自体に価値がある場合は書くという選択になる。
結局、文章の目的は、いかに短い文章で自分の主張を読み手にわかってもらうかということでしかないため、書かなくて良いことであれば書かない方がよい。
論理構造がはっきりしていれば失敗するリスクが少なくなる
論理構造がはっきりしていれば、それぞれが独立しやすくなります。所詮は人間の書くものですから、書いてみたもののすっきりしない場合もあります。そういう失敗が一つのセクション範囲で収まっていれば、他の部分はダメージを受けません。従って、論理構造をはっきりさせることで、全体的に破綻するリスクを下げることが出来ます。
局所的なテクニック
パラグラフの先頭に強い文を持ってくる
パラグラフを読むというのは、ジェットコースターを下るようなものです。頭にまず強い文(例:日本がだめだ、その時だった、私が思うのはこういうことだ)を持ってきて、ジェットコースターを山のてっぺんまで一気に持っていきます。演説のようなものです。
型を合わせる
「理由は、サニブラウンが海外に住んでいる」という感じで話す人に心当たりはありませんか。この文に違和感があるのは、理由と言ってるのにも関わらず、それに続く文章が理由の体を為していないからです。これをプログラミングの用語では型と言います。型を意識することで、こういう些末だがしかし不愉快なミスを避けることが出来る。
接続詞を適切に使う
文章の論理構造をはっきりさせるためには接続詞を使います。例えば、「しかし」と書いてあれば、前の言ってることの逆接であることが明らかになるし、「従って」と書いてあれば、前に言ったことから何か導くのだということが明らかになる。
このように接続詞を適切に使うことで文章はより理解しやすくなる。しかし、これも心当たりがあると思うが「そして」や「だから」など、単体では意味がはっきりしない接続詞も存在する。このようなものはより具体的なものに書き換えることが有力な場合がある。「だから」と書いてるのに前との関連が不適切だったりする文章を見たことはないだろうか。
その接続詞が明らかに適切でない場合は、敢えて省いてしまうというのも有力です。賢い人の話し方やスピーチを聞いてみてください。接続詞を省くことで、その文自体に新鮮さと力強さを与えることが出来ます。
この記事を書くに当たって調査していたら、このテクニックについては既知だったようなので参考までに紹介します。
「接続詞」を断捨離すると、文章がグンと読みやすくなる!? | リクナビNEXTジャーナル
文は短く保つ
「〜し」「〜けど」などで文を長く続けていくのは読みづらくなります。競馬のジョッキーのインタビューを聞いてみてください。彼らの多くがこういう話し方をしています。教養がないからです。(この文が上の「接続詞を省く」の典型例です。本来ならば「なぜならば」をつけても良いと思いますが、敢えて省くことにより、ジョッキーたちの教養のなさを強めに批判出来ます。「彼らは教養がない。」と理由の体にもせず吐き捨てることも、上で述べた型の一致には反しますが有力です。)
強い主張はパラグラフを分ける
パラグラフは、論理的な結合の強い文を集めるべきですが、その最後に何か強い主張が現れる時は、敢えてパラグラフを分けてしまうというのも、一般的にはNGですが、ブログではアリなテクニックだと思います。良い文章は、パラグラフを先頭しか読まなくてように作られているので、読み飛ばされてしまう可能性があります。
ひらがな7割の法則
漢字だらけの文章は読みづらいです。以前に話したのでリンク先を見てください。
【京大式】ひらがな7割の法則 - 読みやすい文章の書き方 - - テストステ論
実践する
今までは、文章を書く上での基本をお話しました。しかし、たぶんここまで読んでもきっと、文章が書けるようにはなっていないでしょう。とにかく実践しましょう。
時間を決めて書く
3時間あるなら1本1時間で3本書いた方が良いと言ってるのではありません。単に、時間を決めて一気にアウトプットするトレーニングをした方がいいです。ブログレベルであれば、トータルで80点をとれば良いという気持ちで一気に書き切る能力を伸ばす方が良いです。そのためには、毎回を練習だと思って1本1時間で限って書きましょう。文字数はまずは1000文字をしっかり書けるようになりましょう。
推敲が大事
自分の文章は何度も読み返しましょう。3000字の文章であっても、読むだけなら1分もかからないでしょう。全体的な構造が腐ってないか、読んでみて意味がわかりにくいと思う箇所はないか、自分の頭で確かめて自分で修正します。1回あたりにだらだらと何十分もかけるのは意味がないと思います。なぜならば読者はそもそも数分しか読みませんから、本当に細かい粗はどのみち見つからないというのが1点。もう1点は、素早く読んで頭をフル回転した方が違和感に気づきやすいからです。頭の中で声を出して一気に読むのを3度ほど繰り返せば、初期のものと比べてクオリティはだいぶ上がっているはずです。
最後に、私が大学生の頃に読んだ、作文技術に関する本を紹介します。このうち、「理科系の作文技術(木下是雄)」は研究室の必読図書でした。今回紹介した以外にも色々なテクニックが存在します。(例:文末の表現を一定にする)文章の技術は一生モノです。気になったら読んでみてください。
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