たった13歳の張本智和選手が日本のエースの水谷隼選手を倒して、そのまま世界卓球選手権のベスト8まで勝ち上がった。世界のメディアでは神童と讃えられているらしい。これがどのくらいすごいことなのか考えてみたい。
まず、将棋界でも天才と呼ばれる藤井四段が登場して話題になっているが、おれの考えではこちらはそんなにすごくない。おれはこのテストステ論で将棋を度々ディスっているが、将棋は日本ドメスティックなボードゲームであり、競技人口も少なく、その中でお山の大将をやっているに過ぎない。羽生などはチェスでもまぁまぁの実力を示しているからそれ自体は国際的な評価として値するが、日本の将棋プロというのは大抵、天才と呼ぶに値しない。彼らは自分たちを天才集団と言って憚らないが、もう少し客観的に考えたらどうかと思う。また、将棋のプロを先生と呼ぶ習慣も彼らがそのように調子に乗るきっかけになっているだけだからやめた方がいい。将棋のプロが本当にすごいかどうかは、少なくとも中国や韓国でプロリーグが出来て、高いレベルで争った時にのみ評価されることであって、日本ドメスティックでやってる限りにおいては、何の評価も出来ない。天才というのは言うまでもなく間違っている。
将棋と同じボードゲームである囲碁に目を移す。AlphaGoと対戦したKe Jie選手は「史上最高の囲碁棋士」「神童」と呼ばれている。この評価は正しい。なぜかというと、囲碁は日中韓のアジア圏内の競技レベルが顕著に高いものの、世界でもプレイヤーがいて、アマチュアの世界大会ではヨーロッパの選手が優勝するくらいなのだ。有名人でもビル・ゲイツなどが囲碁の高段者であることは良く知られている。世界ではチェスか囲碁なのだ。
もともと囲碁は日本が強かったが、今は日本は上の三国の中では最下位である。最近では井山裕太や若手では一力遼が出てきているが、中国や韓国の一流どころと戦うと負けるというのが現実である。この前行われたワールド碁という大会では三国のトッププロとDeepZenGoが総当りで争われるものだったが、なんとAIに負けたのは井山だけで、井山は他の2人にも負けて全敗してしまったのだ。これからも、日本の囲碁プロのレベルがいかに低いかが伺い知れるというものである。
中韓が台頭する前は日本が囲碁が猛烈に強かった。しかしそれは、たまたま日本では昔から囲碁の研究が盛んに行われていたため、先取り学習の効果によって最初は勝てたというだけの話なのである。まともな囲碁としては江戸時代あたりから始まり、それから呉清源によって布石の理論が飛躍し、藤沢秀行や武宮正樹のような斬新な発想を持つ棋士によって囲碁は育てられてきた。中韓の棋士の中には、強くなりたければ武宮の棋譜を学ぶべきだという人もいる。おそらく日本が中韓に勝てていたのは依田紀基の世代までだろう。その頃には中韓は猛烈に強くなっており、神童と呼ばれた金昌鎬やAlphaGoと対戦した李世ドルを輩出していた。依田は金昌鎬に勝ち越している唯一の棋士だったのだ。それ以降、日本の囲碁は低迷する。
では一体なぜ中韓が伸びてきたかというと、彼らの国では囲碁で成功することが経済的な成功も意味するため、彼らは子供の頃から猛烈に囲碁を勉強するからだ。中韓には囲碁ドリームがある。この事はヒカルの碁でも描かれている。ヒカルの碁の連載が始まったのが1999年らしいから、その頃にはすでに中韓の院生のレベルが日本より高くなっていた事情があったものと思われるが確かにその通りで、各国の早碁棋戦の優勝者が出場するテレビ囲碁アジア選手権(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E5%9B%B2%E7%A2%81%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E9%81%B8%E6%89%8B%E6%A8%A9%E6%88%A6)では1998,9年と依田が連続優勝したのを最後にその後17回の開催のうち、日本が優勝したのはたったの2回である。これはそれ以前の10回のうち日本の優勝が7回であったことを考えると、中韓が相対的に強くなった証拠として十分である。彼らは当初は日本の囲碁を徹底的に研究し、才能の面では国家的に天才を発掘し、徹底的に訓練したわけである。
その最高傑作がKe Jieであり、Ke JieがAlphaGoに負けることは人類が負けたというのと等しいのである。彼の涙はその自覚故の涙であったと伺い知ることが出来る。
話を将棋に戻すと、藤井四段がどの程度のものかということについていうと、良くて囲碁の依田紀基、最悪では本因坊秀策程度だろうと考えている。つまりKe Jieのレベルには決してない。Ke Jieを天才だ神童と呼ぶのは正しいが、藤井四段を天才と呼ぶのは根拠が足りない。ましてや将棋プロ全員を天才と呼ぶのは発狂している。
やっと本題に入れる。では張本智和選手はどのくらいすごいかというと、Ke Jieレベルであるとおれは考えている。卓球の競技者人口は世界で3億人と言われていて、趣味でやる人も合わせると8億人と言われている。これは卓球が比較的に安価に出来るスポーツであることや、身体の大きい小さいが一方的に有利不利にならない点などが理由と思われる。同様のスポーツとしては陸上やサッカーなどが挙げられる。実際、世界最高の卓球選手は誰かと言われるとスウェーデンのワルドナーが入ってくるなど、特にヨーロッパでは盛んに行われているスポーツである。実際今でも男子の世界ランキング(http://www.tibhar.jp/wr.htm )には、上位は中国の選手だがドイツなどヨーロッパの選手も入っている。水谷選手がロシアのプロチームに所属していたりもする。競技人口や幅から考えて、卓球と囲碁は大体同じであり(あるいは卓球の方がよりすごい)、そこで神童と呼ばれるのは大変恐ろしいことなのである。
しかし悲しいことに、張本選手の両親が元中国人であることから日本には張本選手に対して批判的な人もいる。ポイントをとるごとに雄叫びを上げることに対しても、中国人は態度が悪いとかなんとか言う人がいるのだが、張本選手は日本人である。彼は日本人として金メダルをとるために、日本人に帰化したのだ。批判している人はこの事を少し考えた方がいい。
テストステ論では今後も張本選手を応援していく。