おれが、一浪目に東工大に落ちたのは、 「麻布卒で一浪して東工大はしょぼいな」 という思いがあり、 やる気が一切しなかったからだと思っていて、 このままではいかんという思いから 二浪時に志望校を京大に変えた。 ちなみに現役時は「おれなら東工大は顔パスだろう」という慢心があった。
京大に行くとなると家を借りることになるし、お金もより掛かるだろうが、 とにかくモチベーションが上がらないという問題を解決するしかなかった。 親としても、何を言ってるんだと思ったかも知れないが、高卒ニートになっても困るというのもあっただろうし、 ラストチャンスということで合格したら京大に行かせてくれることになった。
京大に進学というのはそれまで一度も考えたことはなかった (麻布には京大卒の数学教師がいた。そいつのルックスがかなり悪かったため、どちらかというと 京大には悪い印象があったくらいだ) が、東工大の後期に落ちた日、ふと頭の中に京大に行こうという思いが降ってきた。 なぜ東大を志望しないんだと思われるかも知れないが、 おれは東大があまり好きではない。 理系としては完全にどうでもよい古文漢文を試験に入れたり、 進振りの成績によって進路を決まるようにしたり、 なんでも出来る人間を優遇する点に、矛盾を感じるからだ。
というわけで京大を目指すことに決めたのだが、 残念ながらモチベーションはそこまで上がらなかった。 京大工はそこまで高い壁でもないし、適当にやっていても受かるだろうくらいの慢心があった。 しかし、これは東工大の二の舞パターンだと気づいたおれは、 学コンに挑戦することに決めた。 学コンは良い刺激になると考えたからだ。
【大学受験】大数学コン55点から3ヶ月で名前を載せた最強の数学勉強法学コンへの挑戦は、4月号から12月号の全9回に渡る。 これはおれの中では良い思い出であり、 満点はとれなかったがBコースでなんとか名前を載せることが出来た時には非常に興奮したのを覚えている。 おれは小学生の頃にもチャレンジ算数で名前を載せたことがあったが、 中学受験でも大学受験でも名前を載せたやつはそう多くはないだろう。 これはおれの自慢の一つだ。
思い出の答案は、9回分すべて、手元にある。 成績の推移をまとめたことはなかったのでこの際にまとめてみようか。
号 | 点数 | 平均点 | コース | 順位 | 評価 |
---|---|---|---|---|---|
4 | 73 | 72.4 | A | 117/211 | 有望 |
5 | 90 | 80.8 | A | 112/316 | 実力抜群 |
6 | 40 | 49.6 | S | 100/155 | いま一歩 |
7 | 108 | 122.4 | B | 228/313 | 有望 |
8 | 55 | 116.0 | B | 248/273 | 今一歩 |
9 | 135 | 128.6 | B | 180/314 | 実力抜群 |
10 | 111 | 126.6 | B | 246/318 | 有望 |
11 | 144 | 132.9 | B | 122/310 | 実力抜群 |
12 | 132 | 137.2 | B | 253/345 | 実力十分 |
学コンは1問25点で、Sは1-3問、Aは1-4問、 Bは1-6問。 Sは文理共通、Aは一般的な理系、Bは意欲的な理系向けということになっている。 難易度はSであっても、一般的なレベルからするとかなり高い。
Bコースが最難関なので、当初からここで名前を載せることを目標にしたが、 まずは様子見としてAコースで名前を載せることにした。 これは簡単で、5月号ではさっさと達成出来た。 7月からはBコースに挑戦し続け、11月にぎりぎり名前を載せることが出来た。
Bコースには本当に意欲的な理系受験生しかいない。 大体上位100人くらいは満点をとってしまうのだ。 神々の戦いにおいては満点は当たり前で、さらに解法の良さで順位を競うものらしい。 おれは残念ながらそのレベルに達することは無理だった。 成績は上がってきていたので、あと一年続けていたら、何回かは満点をとれたかも知れないが、 満点が当たり前というのは無理だったろう。 学コンは本当に、頭のおかしい世界だ。
ただ、おれなりに初期の頃と比べて成績は伸ばすことは出来たし、 学コンへの挑戦は誇れるものだったと思っている。
学コンには、考察開始から解答を書き終わるまでの時間を書く欄があり、 ほぼ完以上(20/25点)の解答のみを集計して時間分布が公表される。 これを見ると、ある程度難しい問題になるとたいていは1時間以上はかかっていることがわかる。 学コンに提出しようという意欲的な受験生がだ。 おそらく志望校は東大か難関国立大が多く、京大工志望くらいだとほぼいなかったのではないかと思われる。
これは通常の試験とは性質が全く異なる。 通常の試験では2時間半で6問を解く。 つまり1問で25分以内で解くことを想定している。 すなわち、学コンの問題は入試問題のレベルを超えており、 学コンの問題が解けるからといって入試問題が25分以内に解けるようになるとも限らない。 通常の試験なら捨てるような難問を何時間もかけて解く能力と、それなりの問題を25分以内にささっと「処理する」能力は 実際のところかなり別物なのだ。 実際におれは本番で0完太陽をかましたからこの理論にはかなりの説得力がある。
しかし、学コンに挑戦し続けることは、 特に宅浪生にとってはモチベーションを維持する上で とても有効な手段のように思う。 提出した解答は1枚1枚、綿密な採点が行われる。 採点官は大抵は現役東大生だ。数学系、理論物理系、 あるいは医学部や院生が目立つ。 このようなスーパー採点官たちが自分のぐちゃぐちゃな解答用紙を 必死に読んでくれて、単なるマルバツ以上に たくさんのコメントを残してくれる。 受験者が高校生や浪人生のため、 提出料は1000円かそんなものだったかと思うが、 確実にそれ以上の価値がある。