いいえ、緊急事態宣言は効果があります
明日4月7日、ついてに日本政府から緊急事態宣言が出されることが計画されているそうだ。 それに先立ってこの記事を書いておこうと思ったのは、 おれが「何の強制力もなく、補償もない緊急事態宣言だが、日本人にとっては効果がある」 と考えているためである。
緊急事態宣言とはいうものの、経済活動の制限を強要するものではなく、 あくまでも「要請」するものであるという点を取り上げて「効果がない」とする人もいる。 しかし効果は間違いなくある。それも抜群にある。
その理由は2つある。 この記事ではそれに話そうと思う。
不思議とは思わなかっただろうか。 今日までずっと国民からは「早く緊急事態宣言を出してくれ」 という声が上がっていたわけである。 その理由が、国の未来のためを思ってだとしたら、 なぜそれに逆行した行動をとるのだろうか。 自分たちの経済活動を縛り付けるかも知れない宣言を自分たちから望むのもおかしいし、 それにも関わらず逆の行動を取り続けるのもおかしな話なのだ。
そこには日本特有の理由がある。 そしてその理由こそが、海外のように強制的なロックダウンを必要としない理由なのだ。
理由1: 日本人はやれと言われないとやらないが、やれと言われたらやる民族である
なぜ、日本人が必死に緊急事態宣言を望んでいたかというと、 「国に宣言してほしいから」だ。 自分では決断出来ないから、 国の宣言のせいにして自粛したいと言っているのだ。 何を言ってるのかわからないと思うが、日本人というのはそういう民族である。 「早く出してほしい」というのは、自粛しないといけないというのは頭の中ではわかっているが、 言われないとやることが出来ないから、自分を早く縛ってくれと言っているのである。
上がやると言ったら一致団結し、全員が目標に向かってまっすぐに突き進む。 そういうやり方がうまく行った時期があったため、日本企業がたまたまうまく行った時期が過去にはあった。 しかしその後、自分の頭で何をするか判断し、それを自発的に行動することが求められる時代になり、後塵を拝するようになったのはある意味当然のことだ。 おれが日立にいた時は「やると決めたら一致団結し」というフレーズを100万回は聞いた。
新型コロナの影響によって、多くの学校が休校になってしまい、「勉強が遅れる」という理由で困っている人がいるようだ。 なぜだろうか。自ら勉強することを決めて、それを実行するということが出来ないからだ。 それをあらゆる小学生に求めるのは酷なことであるから、それは親のせいだ。 今では学習参考書などは住む場所に関係なくいくらでも手に入る時代だし、情報も出揃っている時代だ。 なんなら、参考書などなくともある程度の範囲までならばYoutubeで勉強することだって可能だ。 だから、彼らは本当に勉強の仕方がわからないわけではなく、「勉強をやらされたい」のだ。 これも自学自習の精神を基本とする京都大学の出身であるおれからすると何言ってるのかわからないレベルなのだが、日本人は残念ながらそういう民族である。 しかし、やれと言われたことはちゃんとやるから、やはり公立教育が世界的にいえばかなり成功した部類に入っているのだ。
理由2: 日本は身勝手を許さない社会である
日本は子育てに冷たい国であると言われる。 なぜか?子供を作るという行為が身勝手な行為だからである。
満員電車にベビーカーが入ってくる。 必ず嫌な顔をする人がいて、老人が傘で子供を突ついたこともあった。 なぜかというと、狭い車内の中、自分たちがそんなに面積を占有していないのに、 ベビーカーで面積を占有するのは身勝手だというのである。 元を辿ると、子供を作ることも身勝手であり、この国が少子化の道を猛烈に突き進むのは 精神性の問題である。 妊婦の腹が蹴られる事件もたまに起きるが、これも同様の理由からである。 大きなお腹で空間を占有することは身勝手だし、トロトロ歩くのも身勝手だとされるのだ。
こんな国において、 国から緊急事態宣言を出すと、恐ろしいことが起こる。 それに従わない人間は「身勝手だ」とみなされるのである。 だからお互いに監視がはじまり、自粛が大成功する。 日本人は同時に、 元を正せばこれも、自身が身勝手でないことに敏感であるためだといえるが、 他人の目をものすごく気にする精神性でもあるからだ。