中学受験の「全落ち」について御三家出身のおれさまが思うこと

この記事は闇である

この記事には闇があります。 中学受験の闇の部分に触れると発狂してしまう人は見なくてよいです。 すぐに発狂する人に読まれたくないというのもあります。 冷静になってください。

問題:たかしくんはどうなったか?

突然ですが、算数の問題です。

たかしくんはとある学校の合格発表を見に来ていましたが、番号がありませんでした。 これで全落ちが確定しました。たかしくんとお母さんは、抱き合って喜ぶかつての塾友を尻目に、 うつむいたまま学校を静かにあとにしました。 二人は、駅のホームで待っていましたが、お互いに一言もしゃべらず、沈黙だけが静かに流れていきました。 やがて、快速の通過列車がやってきました。 「お母さん、ありがとう」と言ったあと、たかしくんがどうなったか答えなさい。 (GAA学園2020)

全落ちとは?

中学受験の4日以降の闇についてエアで語りました。先っちょだけで良いので見てください。

今日は2月7日。 ここらへんにもなると中学受験の結果は一通りで揃うから、 「全落ち」した家庭もあるだろう。

今は、子供でもネット検索をする時代で、 ネットには有害なコンテンツもたくさんあるから 子供のネット利用を禁じている家庭もあるだろうが、 なかなか完全に防げるものではないので、 「中学受験 全落ち クズ」だとか「中学受験 全落ち 自殺」 でググっている子もいるだろう。親がググってるかもしれんけど。 試しに自分もググってみたが、「面白い」記事が結構見つかるものだ。 おっと、これを面白いと言ってはあまりに気の毒か。

しかし、中学受験で真に面白いのは勝者の輝かしい合格体験記より敗者の絶望なのだ。

おれが25年目の中学合格体験記を書いたのは、 他の合格体験記が片っ端から面白くないからだ。 だから、少しでも面白くなるように、物語調の合格体験記を書いてみたいと思ったというわけだ。 だって最上位層の合格体験記なんて大抵は、「気づいたら開成に受かってました」 くらいの情報量しかないから。 「生まれた時から開成に合格してました」みたいな合格体験記も存在する。 才能は全く不平等だ。

中学受験に失敗し、絶望し自殺する子供もいれば 心中する家庭もある。離婚はザラ。 だから中学受験は美しい。

麻布にも栄光にも落ちたら死のうと思っていた

検索して探し当てた一つの全落ちに関するコラムは、 真の全落ちは実際にはほぼ都市伝説だけど、超安全校にしか受からずに 公立から逃げるためにそこに進学したというケースは 存在し、それを「ほぼ全落ち」と定義している。

おれは1997年に受験し、一日目に麻布、二日目に栄光、三日目に浅野 を受験して結果として全部合格したが、 もし浅野にしか受からなかった場合 (それがおれにとっての「ほぼ全落ち」だった) には私立への進学はさせないと言われていたし、 おれとしてはその場合には死ぬつもりだった。 実際に母親も、そうなった場合にはこの子は死ぬだろうなと思っていたらしい。

なぜ死ぬつもりだったかというと、 夢やぶれて公立の中学なんかに行く惨めな人生を生きたくなかったからだ。

これは後付けの話ではない。 中学受験トップ層の精神年齢は極めて高い。 もし失敗したら自分の意志で死を選ぶことくらいのことは出来る。

「全落ち」は犯罪である

人は何を以って生きているとするのだろうか? 生理的には心臓が動いていることなのだが、おれは 他人の記憶に残っていることという定義の方が 人間の死にとってはより適切だと思っている。 例えば、生理的に死んだ人間のことを「彼はまだ私たちの記憶の中で生き続けている」 ということもある。

全落ち(ほぼ全落ちでも同様)するとどうなるか? あなたは、かつての塾友の記憶の中から消える。 抹消される。触れてはいけない残念な人という扱いになる。 第一志望の学校に落ちて、さぞ落ち込んでるだろうと気の毒がられる存在になる。

実際に、おれの周りでは麻布・栄光・浅野と受けるやつが多かったが、 前の2つに落ちてしまった人は、その後の同窓会的なものにも来なかったし、 その後話題になることもなかった。おれは、「彼」が麻布に落ちたと聞いた時には かなりショックを覚えたものだし、実際に大脳の中に記憶はあるのだが、 みんな、忘れたふりをするのだ。 それは例えば、父親が犯罪を犯した場合に「あなたにはお父さんはいなかったのよ」 というのに似ている。 全落ちというのは、中学受験の世界では犯罪扱いなのである。

それでも生きるというのであれば、はいどうぞがんばってくださいというところだが、 ここまでわかっていれば死を選ぶには十分だから、 別に死んだって不思議ではない。 実際におれは、そうなることがわかっていたから、 落ちたら死のうと思っていたんだから。

落ちたらどうなるかというのは、中学受験の実際に身を置いている子供であれば 誰しも感じていることである。だから、みんな「生き残る」ために死に物狂いでがんばるのだ。 希望の中学に行きたいとか、将来立派になりたいとか、はたまた塾や親の洗脳なんていうのは小さな要素に過ぎない。 みんな、受験で負けたら死ぬことがわかっているから頑張るのだ。

解答例

それでは最後に、冒頭の問題に対する解答例を示そう。

たかしくんはお母さんを快速列車に突き飛ばして殺害し、少年院に入った。

ひっひっひっ。

【25年目の麻布中学合格体験記】あとがき。中学受験は美しい
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