課金すればしただけ強くなれる。 スマホゲーというのはそういうものらしい。
どうやらそこから、中学受験も課金ゲーだという人がいるけど、 外野なのか、課金で行き着けるところしか狙っていなくて真に中学受験をしているとは言えないレベルなのか、 どちらかはわからないが、とにかくその認識は間違っている。
いくら金を突っ込んでも結果が出るかはわからない。 十分な持ち偏差値があっても、本番の振れによって落ちることもあるという意味では、 中学受験はむしろ「ギャンブル」に近い。
桜蔭の入学生の平均世帯年収が1800万、 おれの母校の麻布も1200万。 トップレベルの学校の平均世帯年収はどこも高いので、 これが「金持ちが勝つゲームだ」という誤解を招いてるのだけど、 この数字が示唆 しているのは外れ値の存在でしかない。 これは、入学生の家庭に何人、1億プレイヤーがいるか、あるいは もっと上のとんでもない富豪がいるかということしか意味していない。 なぜかというと、麻布でいうと入学生は300名。桜蔭は250名程度でどこもそんなもんだから、 早い話が年収3億円の人がいると、一発で平均に100万寄与してしまう。
私立中学に、金持ちがいるというのは当たり前の話であり、 これは難関中学に限ったことではない。 お金があれば、教育にも余裕があるだろうし、結果として難関中学に合格するという子も当然存在する。 また当然、金持ちの親はそれなりに血筋が良かったり、知能指数が高かったりすることが多く、 そういうところのご子息が中学受験をしたりもする。 実際にそういう良血馬はそれなりにいた。
それにどちらかというと、偏差値の低い学校の方が平均年収は高いのではないかと思う。 なぜかというと、金が余っていれば、特に難関校に限らずとも私立に行かせるという余裕があるからである。 むしろ中学受験の本当に良いところはこの部分、つまり「金を出せば良質を受けられる」という点であり、 偏差値50程度やもっと下の学校でも、良い環境で良い教育が受けられる学校はいくらでも見つかる。
麻布でも、とんでもない金持ちの家庭の子供というのはいたが、 多くは、ふつうか、少し裕福くらいの家庭だったと思う。 少し裕福というのは、子供に才能があるとわかった時に中学受験という選択肢を選べているからだ。 おれの時代では今ほどではなかったが今が最盛のSAPIXは3年で300万(年平均100万)と言われているし、私立の学校は年間100万。 このくらいは出せないといけないわけであるが、 私立に行かせるのが一人で良いのであれば、そこまで裕福でなくとも出せる金額だろうと思う。 早い話が、ぎりぎりでいいなら平均年収より100万円高ければいいだけだから。
ここまでで、別に裕福でなくとも中学受験をすること自体は可能か不可能でいえば可能だという話をしたわけだが、 収入が多い方が有利であることは間違いない。 しかしそれは、余裕があるかどうかという問題である。 つまり、1万円の馬券を買うにしても、全財産が10万円の人と、1000万円の人ではずいぶんと意味が違ってくるということだ。
ここでギャンブル要素に話が戻るわけである。 中学受験は、才能のスポーツだから、はっきり言ってやってみないとわからない。 典型的には4年生の時に入塾試験を受けて、そこから猛烈に勉強をして、 事実上は5年生あたりでは大体勝敗が決しているわけであるが、 この時点ではもう辞めることはなかなか許されない。子供にしても、勉強をがんばってきたわけだし、それを 「結果が出ないからクビだ」というのは、300万賭けて中学受験を失敗するよりもはるかに悪い教育的結果をもたらすのは明らかだし、 心情的に、もう少しがんばれば芽が出るはずという思いから、やめることが出来ない。 これはパチンコで、もう少し打てば当たりを引けるはずと思って打ち続けてしまうのに似てる。
3年間しっかり勉強して、志望校に届くだけの実力になっても、第一志望に合格出来るのは運要素がある。 よっぽど優秀な子と、記念受験の子を除けば、多くの子は合格ぎりぎりゾーンまでしか仕上げられない (麻布は合格点プラマイ10点付近に100人いると言われている)から、あとは問題との相性とか、 選択問題がたまたま当たったとかの運要素で決まる。
そんなギャンブルとわかっていても、裕福なら余裕で突っ込める。 しかし、ふつうの家庭だと、合格しなければ場合によっては吊るしかない。 結果として、比較的裕福な家庭の子が多くはなるけども、それがすなわち課金ゲーということにはならない。