中学受験における繰り上げ問題の解決方法

麻布卒中学受験評論家が、 中学受験における問題を考えてみた。

繰り上げカスケード問題

中学受験において、 学校側と家庭側の両方を悩まさせている問題がある。 それが、繰り上げだ。

例えばだが、開成中学の合格発表は3日にあるが、 多くの受験生は筑駒も受験しているため、 5日に筑駒合格した場合には、開成に辞退の連絡を入れることになる。 そうすると、例えば海城二次に合格していた子に 開成の繰り上げ合格が来て、今度は海城に欠員が出て、 以下同様に繰り上げがカスケードしていくという具合だ。

下位の学校になるほど、カスケードによる遅延と、 カスケードしてくるパスの多さにより 問題が大きくなる。

学校側の問題

これはまず、学校側にとって問題となる。

例えば開成は400人を超える正規合格者を出すが、 実際にはこのうち200人くらいが最終的に辞退すると言われている。 これは、筑駒合格者以外にも、灘からの鬼殺隊、その他に栄光や聖光に進学する神奈川の芋もいるし、 最近では女目当てに渋幕に進学するマセガキもいる。

開成は、こういった辞退を予め見込んで合格者を出している。 その後も合格者の調整は困難を極め、 最終的に応募300人に対して入学者がそのとおりにならないこともあるだろう。 というかたぶんそうなっていると思う。

開成のようにエコシステムの頂点付近にある学校ならばまだしも、 エコシステムの下層では一体どうしているのか、不思議なくらい難しい問題だ。

家庭側の問題

当たり前だが、繰り上げは家庭側にも問題となる。

ほとんどの学校は、入学手続きを合格発表の翌日あたりまでとしており、 中学受験の結果が理想通りにならなかった家庭のほとんどは、 入学手続きをした上で、希望順位の高い学校の繰り上げ待ちのためホールドすることになる。 入学金は一般に20万か30万円程度であり、実際のところ馬鹿にならない。

中学受験の最終年度では一般に、授業料が上がるのと講習が増えることで、支払いが倍増する。 これは、二月の勝者でも述べられていることである。 散々搾り取られたあげく、さらに何十万も搾り取られたら死んでしまう。

中学受験においては、これは大学受験においてもそうだが、 学力が低い層ほど大量に受験する傾向にある。 さらに、最近では午後入試も盛んなため、実際には1校だけでなく複数校に入学金を払って ホールドしている層もあると思われる。

学校側としては、入学金を払った家庭についても、 最終的に辞退するのであれば出来るだけ早いことを望む。 その方が、補欠を早く出せるし、早く補欠を出した方が優秀な子をとれる可能性が高くなるからだ。 これは特に、中位以下の学校では死活問題となる。

簡単にいうと、 家庭側としてはホールドするためだけに入学金を払いたくないが、 入学金を払ったからと言って無限にホールドされるのは学校側としても割が合わないという ちぐはぐなことが起きているのだ。

連絡手段の問題

最後の問題は連絡手段だ。

繰り上げ合格は、電話によって行われ、もし電話に出なかった場合は即刻辞退とみなされる。 これは学校側からすると、そもそも正規合格でない子供は優先度合いが低いというのはあるだろうが、 何より出来る限り早く手続きか辞退かの返事がほしいからこうなっており、 繰り上げ待ちの家庭は、長ければ一週間以上も、電話の前で祈り続けるはめになる。

簡単にいうと、 お母さん、死んじゃいます。

解決方法の提案

合格コインによる解法

これらを自然に解決する方法は、 各学校が合格コインを発行することだ。 ただしこの合格コインには以下のような性質を持つ。

  • 早く学校側に返却すれば家庭側に報酬が支払われる
  • ホールドすればするほど返却時の罰金が高くなっていく

こうすると何が起こるかというと、 辞退するのであれば早い方がいいので、 辞退の連絡は早くなる。

やりとりはブロックチェーン上で行われ、コインの捏造は不可能。 また、合格コインはウォレットに送金されるため、 繰り上げ合格のために必ずしも電話の前で座して待つ必要はない。 ホールドし続ければ報酬が減り、次に罰金が大きくなっていくだけなので、 ウォレットを確認する頻度は家庭側に自由度が生まれる。

報酬や罰金は、学校側が設定すればよい。 上位の学校であれば、報酬は少なくていいし、 下位の学校であれば、報酬を大きくしてでも早くコインを回収したいと思うはずである。 罰金については逆に、上位の学校の場合は強気でいけるはずだから、罰金は大きく出来る。 一方で下位の学校は、出来るだけホールドしてもらいたいから、罰金は小さくするだろう。

報酬による副次的な効果

こうすることで、得られるもう1つの副次的効果は、 辞退報酬を目当てに受験する層が出てくることだ。 これにより、 本来なら受けなかったであろうちょい上の学力層が受けてくることになり、 そいつらが他を全落ちした場合には入学してくることになるのだから、 特に下位の学校にとっては、今までではとれなかったような学生がとれることになる。

どうかな。

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