このブログに対する検索クエリを眺めていると 「麻布 向いてる子」などとというクエリを見つけることが出来る。
向いてる子というのは、自主性の高い子とかそういうことを意味してるように思うが、 ここでは「麻布に合格する子」という解釈をして、 ちょうど昨日合格発表があったということもあるため、 当時の自分がどうだったかを中心に、麻布学園にはどういう子が入学するのかを話したい。
麻布学園がどういう学校かについては面白い本があるので興味があれば読んでみてください。
麻布中学の入試はかなり難しい
麻布中学の偏差値は高いといえば高いが、それほど高くない。 しかし私は、偏差値以上に難しい学校だと考えている。 というのも私は、偏差値でその少し下にあった栄光や浅野に 余裕合格レベルだったが、麻布にはかなり危なかったからだ。 今はどうか知らないが当時は、麻布と栄光は偏差値がほぼ同じで、浅野は3ポイントくらい下というくらいだったから 難易度としてはそう大差はない。
それにあとに書くように、偏差値的に相当上の灘に合格していたのに麻布に落ちたというパターンも実際にあったり、 少し考えづらいことが起こることがある。これはたまに聞くことだ。
私の場合、自分の中での麻布の合格確度はせいぜい5割だった。 栄光が確勝レベルだったから麻布を受けることが出来たが、 そうでなかったら別の学校を受けていたかも知れない。
問題は得点配分と相性である。
麻布の合格点は200点中110点程度である。120点とると大体安全ラインと言われる。 年によっては120でも足りないことはあるが、とにかく120点とることを目指して勉強を進める。
私の典型的な得点例はこんな感じである。
- 算数 45/60
- 理科 30/40
- 国語 20/60
- 社会 15/40
これで110点。実際には理科がもう少しとれる場合が多いのと、国社がもう少しとれて120という感じだった。 過去問では炸裂しまくって140(合格者最高点がこのくらい)ということもあったと思うが、 平均的にはふつうに出来ると120、失敗すると90点台まで行って死亡という感じだった。 というわけで合格確率はコインの表と裏のどちらが出るかで半分という感じだった。
見てのとおり、典型的な算数と理科でとって逃げ切るタイプの子供だった。 しかしこの得点がどれほど難しいかは、実際に問題を見てもらえばわかるだろう。
まず算数だが、私は40点は大体とれたが、50点以上はほぼとれなかった。 ここには壁があるように感じた。50点以上をとってしまう子というのはかなりすごい。 中には満点をとってしまう子もいるそうだけど、こうなると逆に心配になる。 しかし、最高得点が140程度なので、算数満点をとるような子でも、やはり、他の科目では それなりにしかとれてないか、あるいは全くとれてなくて落ちてたりするかも知れない。 実際に私の身の回りには、算数が私より顕著に出来るが、麻布に落ちてしまった子もいた。 (過去問で私が48点だった時にさすがに勝っただろと思ったが、彼は54点だった。一生勝てないと思ったものだ。 その時に50点をとっていた子は同じく麻布に進んでから東大理1に進んだ) これより、算数が出来まくっても、他の科目がすべて絶望的だとどうしようもないということはいえる。
ツイッターで、中学受験をしている子供の親を漁っていたら、 日能研に通っていて、(いわゆる「頂上決戦」をして)灘に合格したという子供の親がいた。 大手塾はバスを貸し切って遠征してそういうことをやるということは神話レベルでは聞いたことがあったが、 本当にいるようだ。 他には海陽の特待と聖光にも受かってるから、偏差値的には麻布を安定的に凌駕していたように思う。 きっとだが、塾の先生としては開成の方が安定して受かりやすいと思っていたが、 子供の意向で麻布を受験してしまい、見事に粉砕されたというパターンなのだろう。
この子はまさに算数超特化型のよう(灘の中学入試は社会がないため算数特化型に有利だ。だから、確度は高かったのではないかと思う)なのだが、 残念ながら第一志望の麻布には不合格となってしまったようだ。 灘は麻布より偏差値で5ポイント以上高いので、ふつうの感覚ではそういうことは起こらないと思うのだが、 麻布の入試は「問題が異常に難しく、合格点が低い」という特色のため、 ふつうの模試の偏差値との相関を失いやすいのではないかと思う。 「偏差値がアテにならない学校」などとはよく言われる。
次に理科だが、私は8割くらいは堅いという感じで、20点台の答案を見た記憶がないが、 この得点は異常であることがわかると思う。 麻布の理科は、異常な問題を出すことで知られている。 つまり、日能研や四谷大塚の定期試験で出すようなオーソドックスな問題ではなく、 全く未知の問題に対して自分の持っている知識をなんとか応用してチャレンジすることが求められる。 問題文を正しく理解し、作問者の用意した導入に正しく乗ることが必要とされるため、国語の問題と言われることもある。 最近ではどらえもんの問題が有名だが、昨年のコーヒーの淹れ方に続いて今年も パイの焼き方がどうとかいう男子には縁遠い話題で攻めてきた上に、 一般相対性理論をネタにした問題までぶちこんできた。 問題を作っている教員は「こんな問題が解けるやつに早く会いてえなぁ。会いたかったー会いたかったーいえす!君にー(AZB48)」などと言ってきっと楽しんでるだろうが、 塾講師は対策不能すぎて泣いているだろう。 当時もこんな異常問題が出ていたかは覚えていないのだが、 合格点があまり変わってないので、きっとそうなのだろうと思う。 それで8割とるというのは、相当に科学的な思考が出来ないと無理だろう。
こうして、この2教科で80点ほどとってしまい、あとは逃げ切るというのが 私の唯一の合格戦略だった。
国語と社会は常にだめだった。 特に社会はどうしようもなかった。
麻布の社会は理科と同様に、全くわけがわからない問題が出される。 これも、社会科の異常教員どもが愉快犯的にぶちこんできてるに違いない。 私の時は貝塚がどうとかいう問題で、試験中に「これは何を言ってるのか全くわからない」 と頭を抱えていた記憶がある。 泣きそうを通り越して、むしろ笑ってしまうくらいの難しさだった。 終わってみると、過去最悪の出来で、10点あるかどうか怪しい出来だった。 過去問の段階でも、社会については20点とれたら上出来くらいに思っていたからまぁ、想定の範囲内くらいではあったが(笑)。 社会のせいなのか、蓋を開けてみると合格最低点は100点を切っていた最悪の年だった。
国語は、とにかく文章が長く、記述式なのだが、どちらかというとオーソドックスといえるかも知れない。 難しいことには変わりないが、国語が得意な子供であれば8割9割とってもおかしくはない。 私にとっては無理だったから、 【25年目の麻布中学合格体験記】理由を聞かれたら「〜だから」で答える に書いたように他の塾の通信講座を受けたりして、 補強をしたものだが、結局大した役には立たず、得られたのはこんなくだらないブログの執筆能力くらいだから 親も浮かばれない。
まとめると、2科目は得意でないといけないし、その他の科目も真に壊滅してはならない。 これが麻布に合格するための必須条件である。 麻布の入試で120点をとるということがどれほど難しいことかわかっていただけただろうか。
こんな入試問題をするとどういう子が集まるか
麻布の合格最高点は140点やそこらである。 つまり、算数も国語も8割9割とって理科も社会も30点とるという パーフェクトヒューマンは存在しない。
だから、典型的には私のように算数と理科で逃げ切るか あるいは逆に国語と社会で逃げ切るかが多くて、 バランス型で勝負するというのは稀なのではないかと想像する。 バランス型というのは、 算数国語35点理科社会25点の合計120点くらいのことだ。 しかしここを目指すのは却って難しいように思う。
最高点の子というのはたぶんだが、 算数50点国語40点理科30点社会20点の140点とか こういう形をしているんじゃないかと思う。
とにかく、問題の難易度が極めて高いから ふつうの模試でちょっと出来るくらいでは 切り下げられて苦手科目になってしまうし、 自分の長所で戦っていく他ないというのが麻布中学の入試だ。 私も浅野の社会なら9割ということもあったが、 麻布では半分行けば良い方だった。 ふつうの模試を解くための知識が頭の中にあったとしても、 それも生半可扱いされてしまう。
こんな入試をするから、入学生にはユニークな子供が集まる。 私のように算数と理科が得意な子もいれば、中には算数と理科はあまり得意じゃないけど 国語と社会といった文系科目が得意という子もいる。 そんな子供たちに授業が行えることは楽しかろう、 特に社会科の教員は調子に乗って、恐ろしく難しい授業を行うから、 私の場合は中学の段階から日本史と世界史は常に赤点ぎりぎりだった。 もっとも私は、政経の教員が差別問題への意識が高いこともあり「虐げられる」 という言葉を使っていたのだが、そもそもそんな言葉を聞いたこともなかったので 「しいたけって何???」とずっと思っていて、大学に入ってからあれは虐げられると言ってたんだと 気づくくらいだったから、当然といえば当然かもしれないが。
最後に、中学受験をするメリットとして、 自分と同じような知能の子供と一緒に過ごせるということが挙げられるが、 麻布の場合は、極端な理系少年や文系少年が入り交じるわけだから、 中学生の頃から異文化交流をしているに近い環境となる。 そんな世界だから、そのまま理系・文系エリートになってしまう人もいるし、 医者などもたくさんいるのだが、中には芸術家や物書きになったり、 あるいは犯罪者になったりする人間も現れる。 その多種多様性が、麻布のある意味での魅力であり、 他の学校にはないものではないかと私は考える。