GAAラジオの視聴者から、2017年麻布中学入試の国語でロバのサイン会という本が取り上げられたことを教えてもらい、興味があったので読んでみた。
麻布中学は私の出身校なのであるが、特に国語は難易度が高いことで知られていて、その題材には毎年注目が集まるわけである。
2017年度 麻布中 国語・社会入試問題について - 中受のGHG
題材にされたのはロバのサイン会のうち、「おれ害獣」というタイトルの章で内容としては、野生のシカのサンカクとマルが冬になって餌が少なくなった山から、ふと耳にしたナラコウエンという理想郷を目指して旅立つ話。そこは野生のシカとしてのプライドを捨てることで人間に懐柔されれば楽に生きていける、ある意味での理想郷ではあったが、サンカクは野生のシカとしてのプライドを捨てきれず、やがて野生に戻っていくという話。
全体的に、麻布が好みそうな物語文で、「なぜサンカクは山に戻っていったのでしょうか」と問われた場合、大人ならば、会社に飼いならされてる社員とか、そういうものにマッピングして想像することは出来ると思うが、文章中に明には書いてないので、それを想像することが12歳の子供に求められるという点が難しいのかも知れない。特に、麻布中学を受ける子供の大半は理数能力特化なことが多く、そういう子供は文章から登場人物の気持ちを想像するということが難しい傾向がある。
物語文は、大学入試の段階では私も理解したが、状況から「当然そうであろう」ということを論理的に導くことが求められてると考えれば、論説文とあまり大差ない。あくまでも試験であり、答えが存在するものなので、それが答えだと主張出来るだけのロジックがあるはずなのだ。特に、センター試験などの国語は、答えに対して誰も反論出来ないように設計されている。私は、古文と漢文は勉強したら脳がダメージを受けてバカになると思っていたのでサイコロを振って解答していたが、国語はまじめにやるので、9割を切ることはまずなかった。
そういう意味では、「鹿せんべいがおいしくなかったから」なども、文章中に鹿せんべいが美味しいものでないということが一応は書いてあるので、受け入れられたかも知れない。しかし小学生の段階でその能力がある子は特殊なので、私なんかもどうやって登場人物の気持ちになろうかと苦労したものだ。母親からも「なんでわからないの?バカなの?」と良くなじられたものだ。あれは現代的な基準に当てはめるときっと虐待の一種だったのだろう。実際に私は、4年生と5年生の身体測定で、体重が変わらなかったのだ。中学受験をしていなかったら今頃6フィートあったかも知れない。
しかし、ここまであからさまに麻布臭のする題材を取り上げてしまうと、多くの受験生はすでに読んだ状態だったのではないだろうか。実際に私がいた塾では、中学受験に出そうな本をピックアップして、塾生はそれを全部読んだ。ビートたけしの本なんかも中学受験では取り上げられることがあり、読む本はまともな文学に限らない。
私は苦手科目の国語の強化のために、桐杏学園というトップ校専門塾の通信講座を受けていて、それは毎週だか毎月だか忘れたが、本を一冊読んで、その中から問題が出される形式で、超長文と言えるものであった。あれは本当にしんどかった覚えがある。湯島天神で買った「絶対合格」はちまきの裏に麻布合格と書いたものを頭に巻いて、夜遅くまでやったものである。たぶん、まともな文学という意味でいうと、私が一番本を読んだのは小学生の時で、それ以降は技術書とか「燃えよ剣」などの歴史文学、推理小説などは好んで読んだが、夏目漱石とかは我輩は猫であるを読まされながら、わからない言葉があるごとに国語辞典を引いて覚えていくという作業をやったことから恐怖を植え付けられてしまったのか一切読んでいない。
実際に私の受験について話すと、1997年の題材は確か、窓際のトットちゃんであった。
これは黒柳徹子の子供の頃の話であり、超有名な本なのであるが、なんと私はこれを読んだことがあり、苦手な国語でこけずに済んだ覚えがある。超有名な本なので他の受験生も当然初見という人は少なかっただろうから、有利になったということはなかったと思うが、時には60点中10点程度まで大ゴケすることがあり、麻布合格に関して唯一の不安材料であった国語を無事に終えられたことは幸運だった。中学受験は才能も努力も必要だが、運も必要だと思う。
得点だが、たぶん国語は私にしては大勝利の6割くらい、しかし得意のはずの算数がアスペらしく計算問題を落として微妙にこけてこれも6割くらい。理科は普段どおりたぶん30点はある。社会が今でも覚えてるのだが貝塚がどうとかいう激ムズで全くわからずたぶん10点くらい。一体あれは何だったのだろうか・・・。誰が考えたのだろうか。ちゃんと回答出来た受験生はいるのだろうか。合計で120点くらいという予想ではっきり言って、終わったあとは軽く絶望していたのを覚えている。120点だと、受からない年もあるからだ。しかし実際には確か100点だか100点切りくらいの合格最低点で、蓋を開けてみると楽勝だったということがわかった。たぶんみんな社会が出来なかったのだろう。
ロバのサイン会に話を移すと、私は「おれ害獣」についてはタイトルのインパクトや、母校が題材としたということもあり、読み切ることが出来たが、残念ながら他の章については少し読んでみたものの、全く面白いとは思わなかった。ただ、他人のレビューを見てみると「青い羽ねむる」という章は評価が高いので、読んで良かったかなと少しだけ後悔している。気になったら読んでみてください。