中学受験で第一志望に合格するには、その学校に対する憧れなど強いモチベーションが必要だと思う。そこで今回は、自分が麻布を目指すに当たってモチベーションとなった「先輩」たちを紹介したい。
別府
入塾して間もない頃のこと、「よぉ」と言って怪しい風貌の男が教室に入ってきたことがある。
教室の前にあるドアからではなく、後ろの窓からである。教室は2階にあったので、壁をよじ登ってきたことになる。
聞くとその男は塾の卒業生であり、アザブという学校に通っていることがわかった。先生から、別府(仮名)という男だと紹介された。授業を中断しているにも関わらず何のお咎めもなく、むしろ歓迎されているような光景を見て、私は「アザブという学校は特権階級なんだ」「アザブという学校は塀を登ってくるような変人のいるところなんだ」と思った。
もちろんその頃はどこに行くとかを考えたこともなかったし、中学受験をしているわりにはどんな中学があるかも知らなかった。しかしぼんやりと、面白い学校だなぁということは思った。
産まれたばかりの赤ちゃんが、初めて見た人間を親と認識するという話があるが、その時点でどういう中学があるかもわからなかった自分にとっては、この時点で麻布に行くと思っていたかも知れない。どのくらい遠いは、後になって知ることになるのだが。その頃にはそんなに遠い目標ではなくなっていたが・・・。
しかし麻布に入ってからわかったことは、この男はその中でも特段の変わり種であって、頭のぶっ飛んだ人間だったということだ。
麻布には当時、「別府文庫」という彼の隠し書庫があり、そこにはとっておきのエロ本が置いてあったという。(私は恐ろしくてついに見に行くことが出来なかったが)
最近では京大でも立て看板の撤去に反対すると停学になるという話を聞いたが、エロ本を集めた独自の文庫を持っていてもお咎めなしというのは、やはり自由な学校だと思う。勘違いしてゲロ煮込みうどんとかもやっちゃうやつもいますが。
山村
自分の住んでいた地域は、中学受験をする人が多かったという話をしたが、それでも麻布に行ってるという人はさすがに多くはなかった。中学受験を途中までしていたが、うまく行かずやめるという人もいた。
私が通っていた小学校の先輩に山村先輩(仮名)というのがいた。その先輩は丘の上の住人で、その小学校から同じ塾に通って麻布に進学したという人で、同じく陸上もやっていたことも私と共通しており、さらにクラスの担当が陸上クラブの顧問であったこともあり、常に比較され続けた。「山村はこうしていた」「山村なら出来た」という感じだ。
私は自分は自分、他人は他人というタイプなので、他人と自分を比較しようとはあまり思わないし、というか常に自分の方が上で、他人はゴミだという思いが基本的にはあるのだが、この時は自分が山村先輩のコピーであるような感じもあって、絶対に負けられないという思いにつながったし、逆に、絶対に受かるという確信もあった。
こんな感じで、私は話したこともない先輩たちのおかげで、麻布とつながっていた。これが、モチベーションが途切れなかった要因の一つではあると思う。
志望校があって、もし身近にその志望校に通ってる学生がいたら、話してみる機会があると良いと思う。小学生と中学生では身体の大きさも違うしだいぶ大人に見えるものだ。だからなおさら、すごいという憧れを持ちやすいのだと思う。
他にもモチベーションにつながったことはあったが、それはまた今度話そうと思う。